『坂の上の雲』と言えば、正岡子規・秋山兄弟(真之・好古)を主人公に、日露戦争前夜から日露戦争に至るまでを描いた司馬遼太郎の傑作だ。
実のところまだ途中までしか読んでいないのだが、司馬の類いまれなる人物描写や、徹底的なリサーチによって生み出される精緻な背景には驚かされる。
さて、館内では俳人・正岡子規の生涯を取り上げる特別展が行われていた。
彼はそれまで絶対的なものとされていた古今集や芭蕉に対して、初めてちゃんと批判的な眼差しを向け、自ら新しく俳句の体系を確立するも、34にして結核で夭折した人物である。
そんな彼の読む俳句は写実的であり、あるものをあるがまま読むものが多い。
展示を見るなかでそのシンプルさが非常に潔く心地いいものに思えて、自分もマネして俳句を詠んでみようかという気になった。
せっかくなので、松山で撮った写真とともに、詠んだ句をここに載せておきたい。
夏山や 空と海とを 分け隔つ
(松山城の天守閣付近から。空と海との境界線が、奥に見える山でくっきりとしている)
落陽や 海を染めたる 蜜柑色
瀬戸内の 海に現る 夏蜜柑
(沈みゆく日が、自ら以上に濃い色に海を染めていく。城を訪れる前に愛媛のみかんジュースを飲んでいたことも思い出された)
沈んでなお 海空彩る 夕陽かな
(日は奥の山に沈みこんだ。その後もなお、海空に明るさを与えている)
人のなき 松山の城に ねこぞ住む
(天守閣はすでに観覧時間が過ぎ、城から人は居なくなった。そこをねこがわがもの顔で進んでゆく)
松山の 夕陽に映えたる 天守閣
(子規の詠んだ「松山や 秋より高い 天守閣」に寄せて作った。城がどこか寂しげな雰囲気をたたえているように見える)
朱から紺 パレットの色 移らふ
(松山城から見える空はびっくりするほど広かった。都内では感じられないその広さ、色のグラデーションを詠んでみた)
松山編は以上。
尾道編に続きます。